昨年までGT500クラスとGT300クラスの両クラスにエントリーしていたARTAだったが、今年は2台体制でGT500クラスに参戦する事になった。#8 ARTA MUGEN NSX-GTは昨年に引き続き野尻智紀選手を起用。2020年にARTAからGT300に出場していた大湯都史樹選手が500クラスのドライバーとして戻ってきてくれた。開幕前のテストでは好調だったので、今年こそ念願のチャンピオンを掴み取りたい。
予選日の天気は当初、午後から雨の予報だったが、朝から雨が降り、ウェットコンディションでフリー走行が始まった。順調に走行プログラムを進めていたが、途中から雨足が強くなりコースを飛び出す車両が出てきたため、予定より早めにこのセッションは終了となった。
午後はいよいよ今年最初の予選。Q1のアタッカーは野尻選手。予選開始前から雨が強くなったのと、気温も低かったため、予選は5分延長され15分のセッションとなった。野尻は間合いを取りながら入念にタイヤに熱を入れ、終盤にアタックを行った。難しいコンディションを走り切った野尻選手は8番手でQ1を突破。大湯選手につないだ。
Q2が始まる頃の天気は雨が止む予報だったので、チームはタイヤの選択とセットを変更して大湯選手を送り出した。Q2が始まる頃には予報通り雨は止んだが、思ったほどコンディションは変わらず、大湯選手は車のコントロールに苦しんでしまったが、そんな難しい状況でも7番手のタイムを出す事に成功した。明日は良いレースを展開し、表彰台を狙っていきたい。
「今回の予選はコンディションを読むのが難しかったね。そんな中で2人ともとても頑張ってくれた。タイヤ選びを先読みし過ぎてしまった我々の責任ですが、明日は速いと思うので、追い上げて表彰台に立ちたいですね」
「路面の状況を先読みしてタイヤを選んだのですが、そこまで状況が好転しなかったのでパフォーマンスを出し切れなかったのが残念だったと思います。明日はコンディションが大きく変わりますし、そのコンディションに合った車を用意できると思いますので、上位を目指して準備を進めます」
「このチーム、コンビで初の予選ですけど、ボクは何とかQ2につなぐ事が出来たし、大湯選手の時はタイヤ選択を攻めすぎたかな、というところがありましたが、しっかりと走り切ってくれて、良いデータが取れたと思います。色々な事を総合的に考えると今日は合格点だったと思います。明日は諦めずに粘り強く、チームワーク良く戦って、次につなげられるレースにしたいです」
「野尻選手がQ2につないでくれたので、Q2に挑みましたが、ミシュラン勢もテスト通りの速さを見せてきていますし、Q2に向けてセレクトしたタイヤがうまく合わせきれなかったので、7番手という結果になってしまいました。個人的にはタイヤチョイスやセットの判断でチームともうちょっと出来たのかな、というのもありますが、この順位から追い上げを期待してもらいたいですし、それが成し遂げるチームであるのは間違いないと思うので、それをカタチに出来ると思っているので、今から準備していきたいです」
GT500クラスに2台で参戦する事になったARTAは、昨年の8号車のドライバーだった福住仁嶺選手が2023年の16号車のドライバーとして参戦。パートナーは大津弘樹選手だ。シーズン前のテストでは、2人のコンビネーションはとても良く、初めての組み合わせとは思えないパフォーマンスを発揮している。午前のフリー走行はコンディションが安定していなかったが、5番手でセッションを終え、チームやドライバーはQ2進出の手応えを得ていた。
Q1が始まる前に雨が強くなりはじめたので、各セッションが5分延長された。300クラスのQ1がA組、B組と行われたので、500クラスのQ1はその分開始が遅れた。Q1を担当した福住選手はタイヤを暖めながら前後との間合いを取ってアタックに入って行った。しかし、最初のアタックで他車に引っかかってしまい、満足いくアタックが出来なかった。
しかし、5分延長されたおかげでクールダウンの走行を挟んで再度アタックをすることが出来た。この時はタイヤのグリップのピークを過ぎていたが、福住選手はQ2に進出するタイムを出せなかったものの、あと一歩の9番手のタイムを記録する事が出来た。Q2に進めなかったものの、非常にポジティブな内容の予選だったと言えるだろう。明日は表彰台を目指して頑張りたい。
「タイムアタックに出るタイミングがうまく行かなかったね。間合いを取るのがなかなかうまく行かなくて、悔しいです」
「Q2へ行けるだけのパフォーマンスはあったんだけど、前に引っかかっちゃった。タイミングが難しかったね。速い車なので、明日は追い上げるしかないね」
「フリーは悪くなかったですし、Q1を突破出来る手応えはありました。Q1はソフトで出て行って、8号車はミディアムで出て行ったのですが、そのウォームアップの違いで前後の車との間隔を上手くコントロール出来なかった事に悔いが残りますね。明日はドライでスタート出来るので、気持ち切り替えて前に行けるように準備します」
「Q2に進む事が出来なくてとても申し訳ない気持ちなのです。状況としてはタイムを出すタイミングや場所も良くなかったのと、タイヤのピークが来ているところでタイムを出す事が出来ませんでした。痛い結果ではありますが、まだ始まったばかりですし、気持ちを切り替えて明日のレースに取り組みたいと思います」
「今日は1日通して1周も出来ていなかったのですが、選択したところは悪くなかったと思います。しかし、タイミングとかはこういったコンディションでは重要で、刻々と変わるコンディションに合わせなければならないという中でパフォーマンスを出し切れなかったのが悔しいですけど、明日は9番手スタートですし、まだまだチャンスはあると思うので、粘り強く頑張りたいと思います」
今日の岡山国際サーキットは昨日の雨が嘘のような晴天だ。しかし、雨の予報もあり、この開幕戦がどのような展開になるかが楽しみだ。さて、#8 ARTA MUGEN NSX-GTだが、昨年からモノコックに不具合があり、安全の為に開幕直前に交換する事になった。規則により、レース中にペナルティを受けなければならないが、何とかポイントを獲得できるレースをしたい。
パレードラップ、フォーメーションラップからスタートが切られた。レーダーではスタート後15分後くらいに雨が降る予想だったが、フォーメーションラップ中にわずかに雨が降り始めたが、タイヤを交換するほどの雨ではない。
スタートドライバーは大湯都史樹選手。クリーンスタートだったが、順位を落としてしまい、1周目は12番手でストレートを通過。4周目のストレートで前述したペナルティのボードが提示された。
5周目に5秒のピットストップペナルティを受け、コースに復帰。15番手まで順位を落としてしまう。ここで前がいなくなった大湯選手はトップグループと同じラップタイムで前車を追っていく。10周目に入ったところで雨が徐々に降り始めた。15周目には雨足が強くなり、タイヤ交換を行うためにピットイン。前の周で300クラスの車両がコースアウト、FCYの後、セーフティーカーが導入される。
18周目には並び替えの為、メインストレートで全車ストップ。これにより、ペナルティの差が縮まる事になる。
隊列が整ったところでセーフティーカーが先導しながら周回を重ねる。
22周目にリスタートが切られた。この時点で大湯選手は11番手だったが、次の周にひとつ順位を上げ、ポイント圏内を走行。大湯選手のペースは良く、翌周には9番手に浮上。31周目には2台抜き、7番手までポジションを上げる。雨は既に止んでおり、33周目を過ぎたあたりから路面が乾き始めた。FCY中のピットインでペナルティを受けた車があり、38周目には順位を5番手まで上げる。好調な大湯選手は41周目には表彰台圏内の3番手まで順位を上げたところでルーティンのピットイン。野尻智紀選手に後半を託した。野尻選手は10番手でコースに復帰。他車のルーティンのピットインもあり、43周目には8番手、44周目には6番手と徐々に順位を回復。
47周目に300クラスの車両がコースアウトしてFCYが導入され、雨も降り始めてきた。50周目にリスタートが切られたが、300クラスの車両がコースアウトしてしまい、セーフティーカーが導入される。野尻選手はここでウェットタイヤに交換。この時点で野尻選手は4番手を走行。しかし、54周目に赤旗で中断されてしまう。
赤旗が解除になり、セーフティーカー先導でリスタートが切られる。雨が強くなってきたため、タイヤ交換のために数台がピットに入ったが、ホイールナットを締めないまま出て行った車両がコース途中で止まってしまったため、セーフティーカーの先導が延長される。
60周目にリスタートが切られる予定だったが、300クラスの車両のホイールが外れてしまい、セーフティーカーが更に延長されたが、雨足が強くなってきた為、再び赤旗中断となる。
16時20分にセーフティーカー先導でリスタートが切られたが、雨量が減らないため、赤旗中断になり、このままチェッカーとなった。8号車はペナルティを受けながらも、3位表彰台で幸先良いスタートを切った。
「ペナルティを受けてしまったので、今回は難しいと思っていたら、色々と好転して3位を獲れたのは良かったね。でも本当に疲れたレースだった」
「ペナルティを受けて最後尾まで落ちて3位は素晴らしい結果だったと思います。難しい状況の中、良く頑張ってくれてとても嬉しいです」
「ペナルティがあったんですけど、天候が荒れるのはある程度、予想は出来ていたのですが、それを味方にして何とか順位を上げる事が出来ました。最後は赤旗で終わったのですが、あのままレースが続けられれば順位を上げる手応えがあったので、それは少し残念だったと思います」
「チームも頑張ってくれていましたが、最後は赤旗で終わってしまいましたが、リスタート出来ていれば、優勝を狙えたかも知れないという思いもあるのですが、この新しいチームとしてこの3位はとても価値のあるものだと思いますし、このようなレースを戦えてチームワークが強固になると思うので、ドライバー2人とチームで積み上げて頑張っていきたいです。ありがとうございました」
「こんな事があっていいのか?と思うほど、沢山の事がありました。ミラクルもあればペナルティストップもあり、最後、赤旗で終わってしまいましたが、もしかしたらその赤旗後のリスタートでトップを狙えるチャンスを作れたかも知れないので、それは残念でした。野尻さんもやり切れない部分があったと思いますが、でもこんな状況の中で3位を獲れたのは、自信につながりましたし、しっかりポイントと獲れたのは良かったと思います。この流れに乗って次のレースもポイントを積み重ねてチャンピオンを獲れる流れを作っていきたいと思います」
パレードラップからフォーメーションラップに入ったところでわずかだが雨が降り始めた。スタートドライバーは福住仁嶺選手。順位はキープしたまま1周目を終える。7周目から300クラスの周回遅れが出始める。10周目からは雨が本格的に降り始めた。福住選手はひとつ順位を落としてしまうが、12周目のヘアピンで順位をもとに戻す。15周目にタイヤ交換を行うチームが増え、順位を4位に上げる。しかし、ここで300クラスの車両がコースアウト。FCY導入のあと、セーフティーカーに切り替わる。18周目には並び替えの為、ストレートに全車ストップ。福住選手はタイヤ交換を行っていないが、雨は長くは降らない予報。空には青空も見え始める。
19周目にはほとんどの車がタイヤ交換の為、ピットインを行い、暫定的にトップに立つ。しかし、路面は完全ウェットの為、チームは20周目に福住選手をピットに入れ、ウェットタイヤに交換。14番手でコースに復帰。
雨はまだ降っていたが、日差しが出始めてきた。22周目にリスタート。ここで300クラスの車両が前に入ってしまい、15位に順位を落としてしまうが、ペースは悪く無い。雨は既に止んでいて、33周目あたりから路面が乾き始め、ドライタイヤに変えるチームが出始めてきた。ここで、トップを走行していた車がFCY中のピットインによるペナルティが出され、14番手に順位を上げた。41周目を過ぎたあたりから、ルーティンのピットインを行うチームが増え、44周目に福住選手は3番手を走行。福住選手はウェットタイヤを装着していたが、この時点で5分後ぐらいに雨の予報が出ていたので、そのまま走行を続けさせた。ペースが上がらず、順位を6番手まで落としてしまうが、ここで300クラスの車両がコースアウト。FCYが導入され、雨が徐々に降り始めてきた。50周目にリスタートが切られたが、その周に300クラスの車両がコースアウト。セーフティーカーが導入されてしまう。1人のドライバーのMAXの周回数は55周で、これを超えると失格になってしまうため、セーフティーカー導入中ではあったが、ペナルティ覚悟のうえ、54周目に福住選手をピットに入れる判断をしたところで赤旗中断となった。赤旗中のピットインはペナルティの対象とはならないので、ギリギリのタイミングだった。オフィシャルの承諾が得られるまでピット作業は出来ないが、作業OKの指示が出て、タイヤ交換、ガソリン給油、ドライバー交代を終えて、赤旗解除を待った。
セーフティーカー先導でレースがリスタート。雨が強くなってきたため、タイヤ交換のために数台がピットに入ったが、ホイールナットを締めないまま出て行った車両がコース途中で止まってしまったため、セーフティーカーの先導が延長される。2スティント目を走る大津弘樹選手は、ピットスタートとなったが、ラップダウンもあり、復帰した順位は5番手。
60周目にリスタートが切られる予定だったが、300クラスの車両のホイールが外れてしまい、セーフティーカーが更に延長されたが、雨足が強くなってきた為、再び赤旗中断となる。16時20分にセーフティーカー先導でリスタートが切られたが、雨量が減らないため、赤旗中断になり、このままチェッカーとなった。16号車は途中、最後尾まで落ちながらも、上手いレース運びで5位でチェッカーを受けた。
ところが、レース後に「赤旗ラインの無視」のペナルティで最終的には11位でレースを終えた。
*福住選手以外のコメントはペナルティを受ける前のものです。
「雨の降り方が読めないところもあって、仁嶺には苦労させちゃったけど、我慢強いレースをしてくれて、何とか5位を獲れたのは良かったです。難しいレースをチームも良く頑張ってくれました」
「16号車もピットインのタイミングを何度か失い、最後尾まで落ちたのに、5位入賞は嬉しいね。次回はワンツーで締めたいです」
「状況的には荒れた展開になるのは予想出来たんですが、8号車とは真逆の作戦になっちゃったんですけど、結果的に順位を上げる事が出来たので、結果オーライですけど、本当に良かったです。次は2台とももっと良い成績を出したいと思います」
「規定周回数のマックスギリギリまで走りましたが、スタート直後、少しタイミングが悪く、順位を上げられませんでしたが、車のコンディションは良かったです。ボクらは最初にピットに入らなかったところでステイアウトするしかなかったので、雨が降らないことを願ったのですが、雨が降ってしまったり、数回にわたりタイミングよくピットに入る事が出来ませんでした。リスタートの時も300クラスの車両が前に入ってしまったりとか、不運続きでした。そこから、この後の展開はチームの皆さんに助けてもらい、最低限のリザルトは残せたと思います。しかしながら、今回の課題をしっかりと次のレースに生かしていきたいです」
「レース後にペナルティを課されて11位となり、ポイントを取ることができず残念な結果になってしまいましたが、次戦はこの悔しさをバネに頑張りたいと思います」
「難しい状況の中、それぞれの判断をする場面で後手後手にまわってしまった部分もあるのですが、ドライバーの規定周回数ギリギリのところで、しかも赤旗が出てドライバー交代、タイヤ交換が出来て、雨の中スリックで走れて、ボクのスティントで順位を上げられたのは良かったのです。反省点が残るレースになってしまいましたが、もっともっと良い判断が出来たタイミングがあったと思うので、次から更にレベルアップしていきたいと思います」
鈴木亜久里監督のコメント
「コンディションを読み間違えてしまって、悔しい予選だったと思う。応援してくれている人たちは期待してくれていたと思うんだけど、ボク達としてはこのコンディションで硬いタイヤを履いたらどうなるか試したい部分もあったので、タイムが伸びなかったんだけど、普通にミディアムで行けばもっと上に行けたのは見えていました。でもひとつずつ、データを取って、強いチームにしていきます」